夕食の時間を通して、自分の五感と向き合う。料理家・長谷川あかりさんインタビュー
毎日をせわしなく過ごしていると、五感に目を向ける余裕がなくなっていきませんか。朝のコーヒーの香りや旬の食材の美味しさ、植物に触れたときの心地よさは、少し意識を向けるだけで感じられるものであり、日々を豊かにしてくれる合図です。今回は、分譲マンションブランド「THE LIONS」が掲げるステートメント「人生には価値がある」を紐解くために、3人のプロフェッショナルに話を聞きました。それぞれの言葉からは、暮らしをより深く味わうためのヒントが見えてきます。
料理家としてXやInstagramを中心に、多くの人に愛されるレシピを発信する長谷川あかりさん。忙しい現代人に寄り添うシンプルで豊かな料理を提案する彼女にとって、夕食は一日の中で最も大切な時間だといいます。
今回は、THE LIONSが掲げる新たなブランドステートメント「人生には価値がある。」を紐解くために、長谷川さんの「夜時間」と「五感」に焦点を当ててインタビューを実施しました。料理を通じて見つめ直す日常の豊かさ、そして人生の価値とは何なのか。長谷川さんの言葉から、私たちが忘れがちな「上質な時間」の過ごし方を探ります。
ザ・ライオンズ世田谷八幡山 2025年9月撮影
生活のなかで最も身近でクリエイティブな行為=料理を通して、五感の使い方を思い出す

一日の打ち上げとして、一番おいしく食べられるのが夕食
――普段、夜の時間はどんな風に過ごすことが多いですか?
まず、仕事を終えてから、夕食を食べます。一日の終わりを気持ちよく迎えたいから、できる限り仕事が終わってから食事をとるようにしています。
その後、レシピを考えたり写真をセレクトしたりしていることが多いですね。仕事といえば仕事かもしれないけれど、私にとっては仕事というより趣味みたいなものなんです。企画出しをしたり、次にやってみたいことを考えたりすることもあります。次の自分につながることを考える時間ですね。
――「理想の夜の過ごし方」もそういった過ごし方に近いですか?
理想は、時間を気にせず、夫や友達とゆっくりと夕食を楽しみたいです。目の前にご飯があって、お酒を飲みながらしゃべっている、その時間がとても好きです。本当はフランスの人たちぐらいゆっくりと過ごせたらいいのになと思います(笑)。
――一日の食事のなかで、長谷川さんにとって夕食はどのような位置付けにありますか?
夕食のために生きているというくらい、大事な時間です。朝はこれから一日が始まり、昼もまだ後の時間が続いていくから、100%ご飯に集中できないというか、どうしても別のことを考えながら食べてしまう気がします。でも夜は、いったんその日が終わるので、打ち上げのような感覚で、一番美味しくご飯を食べられるタイミングだと思っています。

――これまでに経験したなかで印象に残っている夕食はありますか?
過去にアメリカのシアトルに滞在していた時期があるのですが、そこで知り合った日本人女性の方が作ってくれたご飯がすごく印象に残っています。キノコとトマトが入ったパスタとサラダとワインというような、素朴なメニューでした。
レストランや実家ではなくて、他人にご飯を作ってもらうことが本当に久しぶりだったから、印象に残っているんだと思います。何か素敵なものを“与えてもらった”感覚があって、嬉しかったんです。しかも、シアトルは日照時間が長いので、夜9時くらいまで明るくて、長い夜を楽しめた幸せな時間でした。
シアトル滞在中の素朴ながら印象深かったという夕ご飯
――ご自身で料理をすることが多い長谷川さんだからこそ、より新鮮に感じられそうですね。普段、ご自身で料理する際には、どんなことを感じながら料理されていますか?
料理は、とても身近なクリエイティブな作業だと思っています。普段、みんながみんな何かを生み出したり、アート的な仕事をしているわけではないと思うのですが、そんななかでも料理の時間は誰もがクリエイティブになれる。
手で食材や調理器具に触って、切って、加熱して……。「自分が何を食べたいか」「たまねぎを切る感覚が気持ちいい」「食材の香りがいいな」と、五感を使いながら楽しめる時間です。
それに、料理をしていると、スマートフォンやパソコンも触れないので、自分の感覚に集中できます。だから、料理の時間は私にとってちょっとしたヒーリングタイムでもあります。
――料理を面倒くさいと感じている人も多そうですが、そうやって捉えると楽しくなりそうですね。
もちろん私も、いつもいつも楽しいと思いながらできているわけではないですよ。でも、どうせ作るんだったら、「このスパイスを料理に入れたらどうなるんだろう?」とか、楽しむ気持ちを持ってみる方が自分にとってお得かなと思うんです。
冷奴一つ食べるにしても、いつもチューブの生姜を使っているのなら、たまには生の生姜を買ってみるとか。それだけでも、香りが変わって面白いですよ。

心地よい夕食時間を作る食卓の工夫
――食事を楽しみながら話す時間がお好きとのことですが、普段の夕食時にはどんな風に過ごされていますか?
夫とずっとしゃべっていますね。料理をしている時から食べている時まで、ずっとしゃべっています。実家で暮らしていた頃も、家族でコミュニケーションをとりながらゆっくりと食事することが多かったので、そういう習慣が身についているのかもしれません。
一人で食事する時は、SNSをチェックしながら食べることが多いです。XやInstagramでレシピを紹介すると、いろいろな方が実践して投稿してくださるんです。皆さんの感想を見ながら、一緒にご飯を食べてるような気持ちになっています。
――空間づくりの観点から、ご自宅の食卓にはどんなこだわりがありますか?
最近、テーブルの面積を広げました。私はいろいろな料理をちょこちょこ出したいので、スペースが欲しくて。それに、我が家は割と人がたくさん来るので、4〜5人座れるぐらいのサイズのテーブルを入れました。
――わいわいと楽しめる食卓、素敵ですね! 自宅での夕食時によく使用しているものはありますか?
酒器を買い集めるようになりました。私はお酒が好きなのですが、夫はお酒を飲まないので、一年前までは普通のコップでいいかなって思っていたんです。
でも、日本酒にハマってから、どうしてもちゃんとしたお猪口が欲しくなって。日本酒はやっぱり少しずつ注いで飲むのがいいなと思いました。その話を夫にしたら、お猪口をプレゼントしてくれました。色味が可愛くて、お気に入りです。
他にも、ビール用に模様の可愛いグラスだったり、少しだけワインが飲みたい時用に小さめのグラスだったり、いろいろな種類の酒器を集めているところです。
――酒器もそうですが、お料理も器で印象が大きく変わるかと思います。長谷川さんの器選びのコツを教えてください。
器は、服みたいに選ぶのがおすすめです。世の中にはかっこいい器やおしゃれな器がたくさんありますが、自分っぽくないものを使いこなすのは難しいんです。だから、一つの基準として、自分のよく着る洋服の色合いやデザインに近いものを選ぶと使いやすいかと。白い服が多い人は白い器を使うのが上手だし、柄物の洋服が多い人は絵付けの器を使うのが上手だと思います。
もちろん、料理のジャンルなどによって相性もあると思いますが、まずは慣れているデザインの器を試せば良いと思います。ヨーロッパのアンティークの器に和食を盛り付けても、意外と可愛くなったりします!
集め始めた酒器。プレゼントとしてもらった、左から2番目のお猪口が特にお気に入り。
夜の時間にはお香を炊いてゆったりとした時間を過ごすことも。
<Night Playlist>長谷川さんが夜に聴きたい一曲は?
夕食の最中は、食卓を囲む夫や友人と話すことが多いのですが、それ以外の時間だったら、音楽を聴くこともあります。昔から、aikoさんが好きなので、aikoさんの曲を流すことが多いです。ポップな曲もしっとりとした曲もあるので、その日の夜の気分に合わせて気持ちよく1日を終えられるような曲をかけて楽しんでいます。
すべての経験がいつか「人生の価値」につながる
ザ・ライオンズ世田谷八幡山 2025年9月撮影
――長谷川さんのお話を聞いていると、普通の毎日をちょっと楽しくする考え方の工夫がたくさんあるように感じます。
料理一つとっても、忙しいし疲れているしで、毎日するのはしんどいからやりたくないという人も多いと思います。しんどかったら無理にやらなくても良いというのが大前提の私の考え方です。
でも、やった方が良いと思っているけどできないというのが一番辛いということだと思うんです。そういう時に1%でも良いから、「やらされている」という義務感から、「私が自分でやっている」という能動的な気持ちにシフトしていけると、感覚が変わってくると思います。
それから、料理については具体的なテクニックとして、元気な時に1冊レシピ本を手に入れておくというのもおすすめです。ちょっと新しいことをやってみたいなと思っても、SNSやインターネット検索だと自分に合った情報が表示されやすくなっていて、新鮮さのあるレシピに辿り着くのって難しいように思うんです。一方で、レシピ本だと大抵何個かは自分がやったことのなかったようなレシピが載っている。自分でアルゴリズムの外に探しに行かなくても、意外な情報に辿り着きやすいのが本の良いところです。それを元気なうちに仕込んでおけば、疲れた時にリフレッシュになるような料理へのとっかかりができます。
――長谷川さんご自身も忙しい日々を送られているかと思います。料理以外の時間で、日々を大事に過ごすために意識されていることはありますか?
人と話す時間を大切にしています。頭の中でごちゃごちゃと考えてしまうので、それを発散する時間がないと、どんどん煮詰まってしまって……。今は特に夫が話を聞いてくれるので、夕食の時など、夫と話すことで元気になっています。
あとは、睡眠ですね。寝れば割とリセットできるタイプなので、睡眠時間だけは削らないように意識しています。
ザ・ライオンズ世田谷八幡山 2025年9月撮影
――THE LIONSのステートメントは「人生には価値がある」なのですが、長谷川さんのように日々の行動や習慣の過ごし方を工夫するだけでも、人生の価値の感じ方が変わってきそうです。
そうですね。いろいろなものがつながって、知らないうちに「価値」になっていることってあると思います。子どもの頃にしていたことや、高校生の頃に死ぬほど悩んでいたことが、今になって、自分を支えてくれたりする。
そのときは本当につらかったことが、今は結果的にプラスになって回収されていることが多くて。だから最近は、人生って伏線回収なのかもしれないって思っています。頑張って撒いてきた種が回収され始めた時に、やっと「良い人生かも」って感じられる気がします。
今、価値がない、やっても意味がないと思っていることも、ゆくゆくは何かになるかもしれません。だから、毎日の小さな積み重ねや、自分の五感を丁寧に使うことって大事だなと思います。
ザ・ライオンズ世田谷八幡山 2025年9月撮影
<物件公式ホームページ>ザ・ライオンズ世田谷八幡山
https://lions-mansion.jp/MN220040/
<関連情報>
ザ・ライオンズ世田谷八幡山の詳細
東京都世田谷区「八幡山」エリアの住みやすさを紹介。新宿まで18分の落ち着いた住環境での暮らし
執筆:白鳥菜都
撮影:近藤沙菜
料理家・管理栄養士。「なんでもない日を幸せにする、シンプルで豊かなごはん」をテーマに、忙しい現代人にも愛される数々のレシピを発信。シンプルながらもおしゃれでやさしさを感じる味わいと、管理栄養士の視点で栄養バランスも考慮されたメニューで支持を集める。最新著作は『シンプルだから悩まない! ワンパターン献立 』(ダイヤモンド社)。
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