何気ない交流では価値創造できない、なんてない。【後編】
革新的な催しで日本を盛り上げるアフロマンスさんが大事にしているのはワクワクすることと、何気ない人との関わりから生まれるノイズ。さまざまな人と交流を持つうちに見えてきたのは、拠点を持つということの必然性とそこから広がる可能性。自身も参加するLivingAnywhere Commons(リビング・エニウェア・コモンズ、LAC)への思いと新しい発想を生む秘訣(ひけつ)について伺った。
(2021年4月14日加筆修正)
インフラや情報サービスの発達で、買物や施設の予約、情報の検索などあらゆるものがネットで済むようになった。便利さが増す一方で、失われているものがあることに気付いているだろうか? それは本来の目的とは関係のない“不必要な”コミュニケーション。斬新なアイデアで日本中を沸かせる体験クリエイターのアフロマンスさんは、「異なるジャンルの人同士が直接会って交わす、何気ないやりとりにこそ新しい価値の創造に通じるヒントがある」と語る。多様な人との関係を深めたり、アイデアにつながる“ノイズ”を得る場のひとつとして注目しているのは、LivingAnywhere Commonsなどの地方拠点。人との交流や未知の体験を生み出す“場”を持つことで生まれる発想には、無限の可能性があるという。
常識にとらわれず新しい体験を作れる人を
日本中に増やしたい
イベントで地方を回るうちに生まれた目標の一つはパーティーアカデミーを設立し、イベントをやりたいという人たちを日本全国に増やすこと。「常識にとらわれずに新しい体験を作れる人が地方にもたくさんいたらすごく楽しいと思いませんか?」とアフロマンスさんは瞳を輝かせる。
「自分で言うのは恥ずかしいんですけど、要はアフロマンスを100人作るというプロジェクトなんですよ(笑)。近年、アフロ&サポーターズというボランティアチームにイベントを手伝ってもらっているのですが、応募の3割は地方の方でみんな勉強会じゃないのに参加してくれている。その背景にはきっと何かを変えたいとか面白いことをやりたいという思いがある気がしていて。彼らが育っていくとワクワクも大きくなるし、一緒にコラボレーションしていくことで僕もいろいろなヒントを得ることができる。そういうときにLIFULLさんのLAC(LivingAnywhere Commons)のような地方拠点があると、地域の人ともより深い関わりができるような気がしています」
近年ではイベントや講演で地方に呼ばれ、地元の人たちとセッションすることも珍しくない。だが数時間のやりとりではセミナーなどの内容を地域に落とし込むまでに至らず、人を動かすには弱いと感じることもあったという。
「僕一人で面白いことをやるのには限界があるし、みんなでやらないとムーブメントは作れませんからね。そういった意味でも拠点的な場所があれば、『一晩泊まるから一緒にアイデアを出し合おう』とか『みんなで集まって何かやろうぜ』ということもやりやすくなる。ちゃんと仲間になれるし、一緒に考えて知恵を出し合った方が身になるじゃないですか。その結果、新しい価値が生まれて地域も盛り上がっていけば最高ですよね」

2017年に静岡県の清水マリンパークで開催された「泡フェス祭SHIZUOKA2017」
場所がないとシンプルに人に会うことができない
場所の重要性を語る背景にはネットなどのインフラやSNSの充実で効率化が進み、生活の導線が必要なものにしか出合わないような流れになっていることに対しての懸念もある。
「今までの生活にはもっと“ノイズ”があったんです。例えば服を買うには直接お店に行かなきゃならないし、お店に行くと店員と仲良くなっていつの間にか音楽の話になっていたり。レコード店に行ったらイベントの話になって『じゃ、今度一緒にやろう』みたいな。こういった偶然の出会いや衝突から生じるノイズがインスピレーションの元になっていた。生活が便利になるのはありがたいことですが、必要最小限のコミュニケーションしかないような環境下になっていくほど、新しい発想が生まれにくくなると思うんです」
大事なのはリアルな場所でのリアルな体験。SNSなどのネット上で共有された情報を見てわかった気になるのではなく、直接肌で触れてその場の空気を感じること。会話も「偶然会った知らない人とたまたま話す」くらいの方が面白いノイズに出合いやすいという。
「最近面白かったのは埼玉県志木市で開かれた『柳瀬川ブロックパーティー』。中学生がラーメン屋でDJイベントをオーガナイズするという内容なんですけど、地元のいろんな人たちが集まっていて。ラーメン食べに行くでも音楽を聞きに行くでもいいし、たまたま通りかかって入るでもいい。目的があってないような場だからこそ異なるカルチャーの人たちが混ざり合い、違う世界に触れる入り口となった。こういった未知の経験が今までにないワクワクを作り出す元につながっていくんだと思います」

多様な出会いが生み出すノイズが新しいワクワクを作り出す
集まる人も目的も問わない場での、予想もつかない掛け合わせから生まれる発想には無限の可能性がある。そんな未来のワクワクを生み出す拠点の一つになり得る、LACに対する期待について伺った。
「LACはコワーキングオフィスではあるけど、用途が一つに限られていないところがいいですよね。住むことも泊まることも働くこともできるし、気分で地域の人がお茶を飲みに来るかもしれない。前述の柳瀬川のイベントのように多様なものを合体させられる場だからこそ、いろんな人との出会いやノイズが絡まって新しいものが生み出される場になっていきそうですし。建物自体がプレーンな造りなので“箱”としての汎用性が広いところもいいんじゃないかと思います」
最後に好きなことを形にしたいという方へのアドバイスをいただいた。
あとは『何のためにやるか』という本質を見失わないこと。『いいね!』や集客といった数字に振り回されて方向性を見失ったり、途中で頓挫してしまっては本末転倒ですからね。大切なのは『自分がやりたいからやる』という思いと行動力。自分が作った何かで人が喜んでくれたら最高にうれしいし、そこに見返りなんていらないじゃないですか。もし失敗したとしても次への糧にすればいいだけ。本当の学びというのは経験からしか得られません。やりたいことがあって悶々としている方は、今すぐ動いて早く失敗した方がいい。行動や出会いを繰り返す中でヒントをつかんでいけば、成功にもぐんぐん近づいていけるはずですよ
撮影/尾藤能暢
取材・文/水嶋レモン
体験クリエイター / クリエイティブディレクター / DJ
クリエイティブカンパニー「Afro&Co.」代表。アイデアと実現力で、新しい体験をつくるクリエイター、クリエイティブディレクター、DJ。
本名 中間理一郎。1985年鹿児島生まれ。京都大学建築学科卒。大学在学中に「アフロマンス」名義で活動をスタート。大手広告会社を経て、2015年、Afro&Co.のCEO兼クリエイターとして独立。
主な実績として、2012年に都内初の泡パーティーを開催し、メディアやSNSで大きな話題となり、全国に「泡パ」ムーブメントを起こす。その後、野外フェス 「泡フェス」の全国展開や、TOYOTA LEXUS、資生堂インテグレート、NMB48、チームしゃちほこ、GANTZ、とんかつDJアゲ太郎など、様々なブランド、アーティスト、コンテンツとコラボレーションし、話題となった。
さらに、スプライトのTV CMにも採用された街中を300mの巨大スライダーで滑る「Slide the City JAPAN」や、ハウスミュージックに合わせてマグロをさばく「マグロハウス」、 バスタブに浸かりながら映画を見るチルアウトイベント「BATHTUB CINEMA」の主催に加え、佐賀の日本酒をPRする120万枚の花びらに埋もれるチルアウトバー「SAKURA CHILL BAR by 佐賀」や、東京喰種とコラボレーションした4万本の薔薇と血の美食を楽しむイマーシブレストラン「喰種レストラン」など、数々の体験型イベントを企画し、それぞれ大きな話題となる。
2020年、コロナ禍では、3月に発信した「#楽しいが必要だ」のメッセージが大きな反響を呼び、英語、中国語、スペイン語などに翻訳され、世界に広がった。また4月にはm-floの☆Taku Takahashiらと協力し、累計200万人以上が参加するオンライン音楽フェス 「BLOCK.FESTIVAL」を立ち上げ、5月にはキャラクターが配送する「キャラデリバリー」を企画、6月には車の中で楽しむ新しい音楽フェス「ドライブインフェス」を立ち上げるなど、コロナ禍においても、世の中を前向きにする企画を次々と実現している。
アフロマンス公式サイト:https://afromance.jp
Afro&Co.公式サイト:https://afroand.co/
twitter:https://twitter.com/afromance
Instagram:https://www.instagram.com/afromance/
Facebook:https://www.facebook.com/afromancefp
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