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STORIES 2019/01/18

ゆとり世代は頑張らない、なんてない。

中村 暖

アート&デザイン新世代賞の初代最優秀グランプリに輝き、ファッションブランド「DAN NAKAMURA」として世界に作品を発表し続けている中村暖さんは、まだ大学に通う23歳。高校時代の世界一周を皮切りに、自分から積極的にアクションを起こすことで、さまざまな業界から注目される存在となった。彼が大切にする思いや現在の活動から、これからを背負う若者のパワーが見えてきた。

高校時代に公の海外派遣事業にて世界一周し、若くして有望な人物と目されていた中村さん。20歳になると自身の名で制作を開始し、斬新なジュエリー、ネックレスを提案するように。価値がないはずの廃品を再利用し、美しい輝きのマテリアルに生まれ変わらせる活動は、日本だけでなく世界中から注目されている。現在はロンドンと東京を行き来し、クリエートのアイデア探しに奔走している彼。「自分はずっとラッキー」だと言うが、幸運であり続けるにはキャッチできる才能と努力が欠かせないはず。次世代を代表するリーダーは何を思い、目指すのか。一時帰国中のタイミングを狙ってインタビューした。

捨てられるものを磨いて
美しいダイヤのようによみがえらせる

「世界中を巡りながら、汚いとか不必要とされているものを磨き直し、ダイヤのように輝かせる活動をしています」
という中村さんは、現在23歳。大学院に通いながら、自身のブランド「DAN NAKAMURA」を運営している。

自分だけじゃ作れないけど自分にしか作れないものを

佐賀県で生まれ育った中村さんは、16歳の時に好奇心や世界旅行への興味から県の海外派遣事業にエントリー。プレゼンによって選抜され、念願だった世界一周の研修旅行を体験した。

「幼い頃から物作りが好きで、デザインに興味があることをアピールしました」

自分の会社を立ち上げたのが3年前。工場との契約や流通関係など、法人でないと不都合が多かったためだ。

デザインを学ぶなかで考えたのが、服や宝飾品などの、自分たちが日常的に身につけているものについて。

「低コストの追求によって、環境に悪影響を与えている製品や、劣悪な労働環境の人々などが生まれている事実に気付いたんです。そのマイナスのサイクルを生み出す要因が自分たちの身近にあるんだと」

問題を解決する彼なりの手段の一つがリサイクルジュエリー。

「廃棄物を溶かしたり、磨いたりして僕が一番興味のあるジュエリーに。ダウンサイクルではなくアップサイクルなんです」

以前、ラオスでは地雷や不発弾のリサイクル金属から、ジュエリーを生み出すことに挑戦した。

「現地の人々が爆弾からアルミを取り出し、再利用しているのに刺激されました。僕はマイナスのものや、無駄なものの価値を上げたいんです」

それによって負のサイクルが少しでも緩和されればと願っている。

「今は2019年3月21〜24日、青山スパイラルガーデンで開催されるKUMA EXHIBITION 2019に出展するシャンデリアを制作中。そのためにロンドンへ渡り、さまざまな勉強をしています。現地にアトリエを持つ世界的建築家にお話を伺ったり、自分が過去に作ったジュエリーと博物館収蔵の宝石を見比べたり」

捨てる前提で作る世の中を変えたい

制作において大切にしていることは、リスペクトとオリジナリティー。

「作品を見てくれた大学の先生が、“暖くんだけじゃ作れないけど、暖くんにしか作れないもの”と評価してくださって。いろんな工程でさまざまな人たちが関わってくれるから完成する。その全ての人々に敬意を持つのはとても大切だと、改めて思いました。もちろん、自分の思いも同様に重要です」

彼の個性や思いがわかりやすく表現されているのが、代表作であるビニール袋を再利用した透明なワニ革だ。透明なのは生産者や買い手など、どの立場からもクリアであることを示している。

「ワニ革はラグジュアリー、高級品のシンボル。対してビニール袋は捨てられ、消費されるローなアイテムの象徴です。この極端な両者の融合が新しい価値観になると考えています」

そして、ボロボロになっても溶かして再び製造工程に返せば、新品としてよみがえる点も見逃せない。

「ビニール袋のように、捨てる前提で考える世の中を変えていかないと、資本主義による消費社会は拡大する一方。決して動物愛護的な発想が原点ではないですが、環境に良くて長持ちする美しいものが作れればベストですよね」

トップを知らないと超える作品は作れない

 リアルタイムに熱意を傾けているシャンデリアも、ペットボトルやガラス、廃材などが材料。

「一流に触れないと超一流は作れないと思い、ミュージアムからカフェまで、とことん見て回りました。泊まれないような最高級ホテルのシャンデリアは、窓からのぞいて写真を」

さまざまなものを直接見ることが、アイデアの源になっているとか。

「多くの人が良いと思うものには、共通項があるはず。それを探すにはたくさん見る必要が。発見できれば今までにない作品を発表でき、世界を驚かせられるでしょう」

20代前半にして自分のブランドを持ち、世界経済フォーラム(ダボス会議)のグローバルシェイパーにも選出されている彼。しかし、もっと高いステージに居なければと思っているそう。

「まだ望んでいる自分だとは言い難いです。あれがしたい、これがしたいというのは尽きないので。もっとお金があれば、もっと英語が話せれば……」

とはいえ、不満とも違う。ある種のジレンマを抱えているのだ。

「だけど、現状を不満と思ってしまうのは、今の僕を支えてくれている人たちに失礼。ですから、毎日がもっと!と、満足の繰り返しなんです」

僕はずっと幸運に恵まれています。だけど、自分で動き、つかみにいっているので、実力だとも思いたくて。実際、常にカバンの中には自分の作品や活動などの資料が入っています。やりたいことがあっても実現できない人はたくさんいると思います。まず、チャンスを逃さないよう、自分の強みやチャンスに応える力を常に磨き、肌身離さないでいるのはどうでしょう? いつどこにどんな出会いがあるか分かりません。重量なんかに負けてチャンスを逃すのはもったいないですよ!
Profile 中村 暖

1995年生まれ。佐賀県出身。高校1年生で県の海外派遣事業に応募。世界一周を経験する。京都造形芸術大学に入学後、2015年に世界経済フォーラム(ダボス会議)、「World Economic Forum - Global Shapers Community」メンバーに選出。翌年、株式会社DAN NAKAMURAを立ち上げ、渋谷ヒカリエホールにて初のファッションショーも開催した。17年には、コレクションがニューヨークのアートギャラリーにて展示されるように。19年3月21〜24日、青山スパイラルガーデンで開催されるKUMA EXHIBITION 2019に、最新作のシャンデリアを出展予定。

STORIES 2019/01/18 ゆとり世代は頑張らない、なんてない。