【後編】民間シェルターとは? 種類・利用実態・利用期間・DVや虐待を受ける女性や子どもへの支援を解説!

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後編

「必要ならば私たちは支援する用意がある」ことを伝える

DV支援で難しいのは、被害者が暴力被害の相談を控える点にあります。前出の内閣府男女共同参画局の報告書では、女性の約4割、男性の約7割はどこ(誰)にも相談していないということが分かりました。相談するとしても、大多数は家族・親戚、友人・知人で、被害状況は社会的に認知されにくく、専門的なサポートを受けるのが困難です。

厚生労働省の「DV対応と児童虐待対応の連携強化のためのガイドライン」(2020年度)によると、被害者は虐待や暴力を受けていても、そのことを考えないようにして、聞かれたことについても答えることを避けようとする人もいるとのことです。

それを踏まえた上で「一般的にこういうものが暴力とされ、それから抜け出すサポートがあります」と説明し、「あなたの場合に当てはまることも当てはまらないこともあるかもしれないけれど、当てはまることがあれば手助けします」という押し付けにならない工夫が大切です。

同ガイドラインから、DV被害者への言葉かけの例をご紹介します。

  • よく打ち明けてくれましたね。
  • あなたは一人ぼっちではありません。
  • 暴力を受けているのは、あなたのせいではありません。
  • 暴力を受けていい人なんか存在しません。
  • あなたがおかしいのではありません。
  • いろいろなサポートを得ることができますよ。
  • ゆっくり考えて、自分で決めていいんですよ。

※出典:DV対応と児童虐待対応の連携強化のためのガイドライン|厚生労働省

民間シェルターへの支援を行う取り組み

DV被害者や虐待を受けた子ども、難民、ホームレスなどを含め、さまざまなバックグラウンドを理由に賃貸物件を借りにくい人たちは「住宅弱者」と呼ばれます。そういった自分の居場所を確保することが難しい人たちを、一時的に保護する住まいであるシェルターの提供を行う取り組みがあります。

株式会社LIFULLで秘書業務を行う新垣ユミさんは、LIFULLの社是である「利他主義」に強く引かれ入社を決めたそうです。その新垣さんが取り組んでいるのが「えらんでエール」という住宅弱者を支援する活動です。具体的には、財政難・人材不足に悩む民間シェルターへの資金援助を行ってきました。

ただ、シェルターはあくまでも一時的な避難所であり、入所者が社会に出て、自立していくさらなる支援が必要です。そこで新垣さんは、「不動産会社と借りたい人とのネットワークのハブになることで、困っている人が“一瞬ホッとできる場所”である“家”をまずは探せるようになればいいなと考えています」と語ります。

新垣さんの「壮大な夢」は「誰一人取り残すことなく、誰もがしたい暮らしに出合えるような世界を実現していく」ことです。

まとめ

「民間シェルター」に実際に避難する人は一部であり、家庭内でのDVや虐待はいまこの瞬間も私たちの知らないところで起きています。まずはその事実から目をそらさずに、知ろうとすることが大切です。その上で、DVや虐待を「各家庭の問題」「人ごと」と片付けずに、地域社会全体で取り組もうとする意識を持つようにしたいものです。

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監修者 北仲千里

NPO法人全国女性シェルターネット共同代表を務める傍ら、広島大学ハラスメント相談室准教授としても活躍中。1967 年和歌山県新宮市に生まれ、ジェンダー論を中心に社会学を専門に研究。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程修了後、1997 年頃より「キャンパス・ セクシュアル・ハラスメント全国ネットワーク」設立に関わる。以後、DVや性暴力などに関する被害者支援にも積極的に携わる。

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