不動産会社は社会を変えられない、なんてない。 ―LIFULLのリーダーたち―LIFULL HOME'S事業本部CSO、賃貸事業CEO 加藤哲哉

LIFULL HOME'S事業本部CSO、賃貸事業CEO 加藤哲哉 LIFULL HOME'S

ソーシャルエンタープライズとして事業を通して社会課題解決に取り組む株式会社LIFULLは、チーム経営の強化を目的に、新たなCxOおよび事業CEO・責任者就任を発表しました。性別や国籍を問わない多様な顔ぶれで、代表取締役社長の伊東祐司が掲げた「チーム経営」を力強く推進していきます。
シリーズ「LIFULLのリーダーたち」、今回はLIFULL HOME'S事業本部CSO(Chief Sales Officer)、LIFULL HOME'S事業本部 賃貸事業CEO 加藤哲哉に話を聞きます。

LIFULL HOME'S事業本部CSO、賃貸事業CEO 加藤哲哉

新卒で住宅情報事業に携わって以来、「不動産会社の社会的地位を上げたい」という信念を持ち続けてきた加藤。空き家問題や入居差別など今も残る住まいをめぐる課題に対して、不動産会社とともに解決に向けてアプローチしています。不動産テックの黎明期から現場を見てきた加藤の言葉は、目の前の課題に実直に取り組む行動力に裏打ちされた、たしかな説得力を持っていました。

一つのモノを作って終わる仕事よりも、メディアを通じて目の前の課題を解決していく仕事のほうが、僕には向いていると感じました。新卒で住宅情報事業部に配属されたのは偶然だけれど、目の前の課題に向き合って、その解決を目指すことで、社会はより良くなっていくと信じていました。

不動産業界から始まる社会変革を信じてきた

――加藤さんは1984年に新卒でリクルートに入社して以来、住宅関連の事業に関わってきました。どんな始まりだったのですか?

リクルートで住宅情報事業部に配属されたのは偶然です。ただ、面接で「メディアには世の中を変える力がある。社会を動かす可能性を秘めた仕事だ」と言われたんです。メディアを通して、学校や会社が抱える目の前の課題にアプローチして、結果として世の中の流れも変えていけるのは面白そうだなと思いました。

――身近な課題の解決から社会の流れを変えていこうとするのは、実直な姿勢だと思います。

僕の性格でもありますが、目の前にある課題に対してリーダーシップをとって、狭い領域から突き詰めて解決していくタイプなんです。最初に配属されたのが住宅領域だったのは予想外でしたが、領域を絞って見ていくうちに、不動産業界の課題が見えてきました。海外では「不動産エージェント」として高い専門性と報酬を得られるような尊敬される職業なのに、日本では「不動産ブローカー」という言葉が残っていて、当時は詐欺と結びつくような悪いイメージがあった。実際におとり広告が蔓延していたし、大きな金額が動くので悪意を持った人たちもいたんです。新卒の頃は「僕が住宅領域に配属されたのは、この業界を良くする役割を担うためかもしれない」なんて思っていましたね。目標は、2年目で「加藤さんみたいな人がいるから、不動産業界は良い業界だね」と言われることでした。

――不動産業界が良くなれば、結果として社会も良くなるということですね。

はい。まずは不動産会社の社会的な地位を上げていきたかった。たとえば、外国籍の人や障がい者を入居させない不動産会社は今でもあります。そういう差別的な仕事をしている限り、業界の社会的地位は上がっていかないんです。不動産会社の地位が上がり、業界に優秀な人材が入ってくることが、結果として世の中を良くしていくと思っています。

――加藤さんは2000年にリクルートを退社して、株式会社レンターズを設立しました。その決断も「不動産会社の社会的地位を上げること」を目指した結果ですか?

そうですね。レンターズは、物件情報や広告出稿の管理、顧客とオーナーの管理など賃貸営業に関わる業務をサポートするシステムを提供していました。僕がレンターズを立ち上げた2000年は、Windows98の登場で急速にインターネットの可能性が注目されはじめた時期です。当時の僕はリクルートで賃貸領域のエグゼクティブマネージャーとして、「人と住まいのベストマッチングを実現する」というビジョンを持っていたんですね。そして、圧倒的な情報量とスピードを、紙よりもローコストで提供できるインターネットは、ビジョンを一気に加速させるツールになると思った。不動産会社にとってインターネットはベストマッチングを実現するための最適なツールだから取り入れようと会社に提言したのですが、当時はまだ紙メディアが主軸だったため実現できませんでした。そこで「自分でやったほうがスッキリする」と思ってレンターズを立ち上げたんです。

――その後、2007年にレンターズはネクスト(現LIFULL)の子会社になります。経緯を教えてください。

まずは業務支援のシステムでビジネスを始めて、ゆくゆくは不動産メディアを立ち上げようと思っていました。2007年時点で事業は軌道にのっていて、自社でメディア展開に踏み出すことも可能な状況だったんです。ただ、すでに『HOME'S※』や『at home』などのメディアが台頭していたので、自分たちでメディアを立ち上げて彼らと競争するのか、協業するのかを考えました。2000年当時に僕が描いていた不動産業界のインターネット化の世界観がほぼ現実のものになっていたことも後押しして、すでにメディアを持っている企業と手を組もうと思ったんです。レンターズのマッチングシステムと不動産メディアを組み合わせれば、より速く、より広く社会変革が加速すると考えました。

※2017年3月以前のサービス名。現在はLIFULL HOME'S(ライフルホームズ)が正式名称

LIFULL HOME'S事業本部CSO、賃貸事業CEO 加藤哲哉

当時ネクストの社長だった井上(高志)に声をかけたら、すぐに同意してくれました。実は同じタイミングで、井上はHOME'S事業にレンターズと同じような不動産会社の業務支援システムを作ろうとしていたんです。ですから、ネクストとの協業はあっという間に決まりましたね。

LIFULL HOME'S賃貸事業と「老卒採用」の未来図は?

――2007年にネクストグループに入ってからの経歴を教えてください。

最初は、レンターズの社長とネクストの執行役員、HOME'S事業本部の副本部長を兼務しました。2017年にネクストがレンターズを吸収合併したのを機に、事業統括部で情報審査を担当するようになりました。不動産ポータルサイトが協働して、日本の不動産情報の精度を上げていく取り組みです。

ーーそして、2024年9月にLIFULL HOME'S事業本部賃貸事業CEOに就きました。今はどんな仕事をしていますか?

LIFULL HOME'S事業部で、営業全般のマネジメントと賃貸事業の戦略立案に携わっています。これから数年は、物件情報と周辺情報の拡充、そして情報の鮮度を着実に向上させることに注力していきます。これまでも取り組んできたことですが、不動産情報メディアは日本全国の空き家情報をより豊富に、鮮度高く届けることが大切なのです。

――LIFULLは、事業を通じて社会課題解決に取り組む企業グループであることを明示しています。加藤さん自身は、事業を通してどんな社会課題を解決していきたいのですか?

住まいにかかわる社会課題は数多くあります。空き家問題をはじめ、外国籍の方や障がいのある方、高齢者の入居拒否問題など、誰もが安心して暮らせる住まいが十分に確保されていないことが大きな課題です。LIFULL HOME'Sでは「FRIENDLY DOOR(フレンドリードア)」などの取り組みを通じて課題解決を図っていますが、僕は、不動産会社の地位向上から根本的な解決にアプローチしていきたい。日々の不動産取引の最前線を担っているのは、全国の不動産会社です。LIFULLだけではカバーしきれない細部までリーチして、社会課題の解決を加速させていくためには、現場を支える不動産会社の価値を高めることが不可欠だと思っています。

LIFULL HOME'S事業本部CSO、賃貸事業CEO 加藤哲哉

――加藤さんは公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(以下、日管協)の理事もしているので、LIFULL HOME'Sの取り組みと併走できそうです。

新卒で不動産情報事業部に配属されて以来、「不動産会社の社会的地位を高めたい」と言い続けてきました。その姿勢に賛同してくれた方々に声をかけていただいて、日管協の理事も務めています。LIFULL HOME'Sでは差別のない健全な業務をしている不動産会社を可視化しつつ、日管協では志高く革新的な取り組みをしている不動産会社の活動を発信していく。両面からアプローチすることで業界の信頼向上に寄与して、不動産会社の社会的地位向上を加速させていければと思います。

――加藤さんの「しなきゃ、なんてない。」は?

「不動産会社は社会を変えられない、なんてない。」僕は、不動産会社が社会的にリーダーシップをとって、社会課題に取り組んでいくのがさまざまな課題解決の近道だと思っています。結果として、社会が変わっていくと信じています。

LIFULL HOME'S事業本部CSO、賃貸事業CEO 加藤哲哉

――LIFULLは、人生を通じて培ってきた“超経験”を活かして働きたいシニアを採用する「老卒採用」第二期募集をスタートします。加藤さんは、人生100年時代の不動産業界の働き方をどう見ていますか?

日本には約13万の不動産会社があると言われていますが、その多くは社員数人の小規模な事業者で、経営者が高齢になってきています。そういった経営者層は世代が近いほうが話しやすいし、住宅購入や賃貸経営の経験がある人のほうが本音で話し合えると思います。不動産業界は、第一線を退いた後も経験を活かして活躍できるフィールドです。特に、不動産業界を引退した方は多いので、「老卒採用」というかたちで再び現場に関わっていただけるのは、とても理にかなったマッチングだと思います。

これまでいろんな地域を見てきましたが、過疎が進んでも活力を保っている地域には、たいてい優秀な地場の不動産会社の存在があります。まちづくりの視点から、商店街の空き店舗にはどんな事業者が入ったらいいかを考えたり、行政と連携して景観条例を整備したり。不動産の価値を守りつつ、ランドスケープの観点から新しい付加価値を生み出していく……不動産会社は、こんなことができるのですよ。

執筆 石川歩

LIFULL HOME'S事業本部CSO、賃貸事業CEO 加藤哲哉
Profile LIFULL HOME'S事業本部CSO、賃貸事業CEO 加藤哲哉

1961年東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、リクルート入社。不動産・住宅メディア事業中心にマネジャー業務を歴任し2000年退社。
同年(株)レンターズを設立し代表取締役に就任。不動産領域として日本初のCRMシステムを軸にした業務支援システムを開発、販売し業界のデジタル化、効率化を推進。2007年(株)LIFULLの執行役員に就任。2017年に(株)レンターズを(株)LIFULLに吸収合併。
現在はLIFULL HOME'S事業本部CSO(Chief Sales Officer)兼賃貸事業CEO。その他(財)日本賃貸住宅管理協会理事、All About賃貸・部屋探しガイド等を務める。

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