同性を好きになっちゃいけない、なんてない。
2017年、家族が見守る中、結婚したみなつさんとしゃのんさん。小学校高学年で、同性を好きなことに気づき、同性愛者として生きてきた二人は、出会って4か月目には、結婚を決めていた。でも、「入籍して同じ名字になる」という、異性愛者にとってはごく簡単なことが、同性愛者にはできない。二人を取り巻く環境から、LGBTの人々の前にはだかる異性愛者とのボーダーが浮き彫りになってきた。
性的少数者の総称の一つを表すLGBT。みなつさんとしゃのんさんは、女性の同性愛者を表すL=レズビアン(Lesbian)に該当する。2017年のある報告※によれば、日本には約8%( 約12人に1人 )いるという。
2015年、渋谷区と世田谷区がパートナーシップ制度をスタート。この動きは全国的な広がりを見せている。2017年には、男女雇用機会均等法に基づくセクハラ指針が改正され、LGBTに対する職場のセクハラも対象になる旨が明記された。
制度上は、前進しているかのように見えるが、LGBTを巡る誤解や偏見、差別が解消されているとはいいがたい。当事者であるみなつさんとしゃのんさんも、LGBTへの嫌悪を感じた経験を持っている。しかし、マジョリティである異性愛者が、どれだけ「同性を好きになっちゃいけない」と思っていても、人を好きになることは誰にも止められない。初対面で結婚を直感し、想いを貫き、結ばれた女性カップルの過去、現在、未来を聞いた。
※参議院常任委員会調査室・特別調査室「LGBTの現状と課題」より
同性が好きってことで、
悩んだことはないです
みなつさんとしゃのんさんが、女の子が好きだと自覚したのは、小学校高学年の時だった。
「特に何かあったわけじゃないですけど、その時は『普通じゃない』と思いました。地方で暮らしてたのであまり情報がなかったし、女の子は男の子を好きになることが当時の私にとっての『普通』だったんです。それで、中学生になって男の人と付き合ってみたこともありました。でも、やっぱり違ったんです。男の子は、恋愛対象としては好きになれなかった。半年過ぎても、手もつなげない。というより、つなごうとも思わなかったんです」(みなつさん)
「私の場合は、男の子に友達ではなく、恋愛の意味での好きという感情がわかなくて、あれって思ったんですよね。仲のいい女の子が男の子と付き合うと、彼女を取られちゃったみたいですごくイヤでした。それで、『あ、私は女の子が好きだな』って」(しゃのんさん)
自分自身は性的指向をすんなり受け入れることができたが、家族や友人にカミングアウトするかどうかは迷った。みなつさんは、中学3年生で母親、高校2年生で父親に告げた。

「母親は、なんとなく気づいてたみたいで、突然『レズビアンとかウェルカムなんだよね』って言いだしたんです。その流れで伝えたら、本当にウェルカムで(笑)、『なんだっていいんじゃない』って言ってましたね。父親も大丈夫でした」(みなつさん)
一方、しゃのんさんが両親に告げたのは、結婚の直前だった。
「父親は外国人ということもあって、あっさり『いいんじゃない』って感じだったんですけど、母親は『知ってたけど、わざわざ言う必要ある?』みたいなことを言ってました。たぶん『今は女の人と結婚すると言ってるけど、将来的には考えが変わって男性と結婚するでしょ』みたいなニュアンスで。私がレズビアンであることは、これからも変わらないのに、そう言われたら受け止めるしかなかったですね。でも、今は以前に比べると女の人との結婚がイヤって感じも薄れてきて、仲よくしてます」(しゃのんさん)
二人の出会いは、友達募集の掲示板。連絡を取り合うようになって1か月ほど経ち、初めて会い、みなつさんはすぐに結婚を意識した。
「この人以外いないなって直感して、付き合って4か月目には、結婚式場のパンフレットを取り寄せてました」(みなつさん)
「式場のパンフレットが実質的なプロポーズで、『展開、早いな』って思いました(笑)。でも、結婚式前日に眺めのよいレストランで、正式に『結婚してください』と口にして言ってくれた時は、すごく嬉しかったです」(しゃのんさん)

入籍して同じ名字になりたい
自治体単位でパートナーシップ制度ができてきて、二人も利用した。しかし、「別にしてもしなくてもよかった」と感じた。クローズドな場所に連れていかれ、宣誓書に署名しただけだったからだ。しかも、異性婚とは違い、同性婚者は籍を入れることはできない。だからこそ、結婚式という“形”にこだわった。
「両親に結婚式に参列してもらい『私たち、ちゃんとしてますよ』ってことを知ってほしかったんです。やっぱり、同性同士でも、結婚したら籍が入れられて、二人が同じ名字になれたらなって思いますね。今は、会社に提出書類で配偶者の有無を問う項目に、私は丸を付けられません。入籍してないから、付けちゃったらウソになるんじゃないかって心配になっちゃうんです」(しゃのんさん)
「私は迷わず丸を付けちゃうんですけど(笑)、扶養控除とかは正直どうでもよくて、ただ二人で家族になれた証しとして同じ名字にはなりたいだけ。それには、婚姻届を出せる制度は整ってたほうがいいなって思います。実は、役所で婚姻届をもらったんです。この日に私たちは結婚したってわかるように、結婚した日付を入れておいて、いつか、同性婚でも提出できる日が来たら提出できるようにって。速攻で飼ってる猫にビリビリにされちゃったんですけど(笑)」(みなつさん)

進むダイバーシティへの取り組みと現実のギャップ
なかなか整わない法整備。ダイバーシティ(多様性)への取り組みが進みつつあるが、認識が十分とは言えない。たとえば、二人が挙式した式場の結婚証明書。
「今って、結婚式場サイトに“LGBTフレンドリー”であるか否かの項目があるんです。検索して該当した会場を選んだのに、結婚証明書には『ここにいる男女』と書いてありました。聖書の一節だから、変えるわけにもいかないんでしょうけど、『“男女”か』とちょっと引っかかりはありましたね」(みなつさん)
LGBTを巡る社会的課題は山積みだが、二人とも、これまで同性愛者であることで、悩みらしい悩みもなく過ごしてきたという。同性愛者の友達に囲まれ、そのコミュニティの中にいれば、その世界が狭いとは感じても、偏見の目にさらされることはない。手をつないで歩いていて、「女の子同士なのに」とすれ違いざまにおばさんから言われてもまるで気にならない。それは、「ただの通りすがりの人」(しゃのんさん)と割り切れるから。しかし、毎日顔を合わせる職場の人となると話は変わる。ある日の朝礼で、同性愛への偏見を感じる出来事があった。
「LGBTが議題だった時に、男性の上司が『ここにはいないと思いますが』と言ったんですよね。いやいや、目の前にいますよと(笑)。職場ではLGBTだと告げてないので、その上司に悪気は感じなかったんですけど、同僚の女性が苦々しく『同性愛者ね……』ってつぶやくのが聞こえて、LGBTへの嫌悪感があることがわかっちゃいました」(しゃのんさん)

人を好きになる気持ちは、同性愛者も異性愛者も変わらない
LGBTの人々に立ちはだかる社会的な壁はまだまだ高いと言わざるを得ないのが、日本の現状だ。しかし、二人が結婚し、猫3匹と幸せな日常を送っている事実は変わらない。誕生日が近い二人は、毎年、決まった場所に旅行する。みなつさんがこれまでの歩みをかわいらしくコラージュしたアルバムをしゃのんさんに贈ったところ、しゃのんさんは泣いてしまった。誕生日を祝い合ったり、喜ぶ顔が見たくてプレゼントを贈ったり、相手を想う気持ちは、異性間も同性間も、何ひとつ変わらない。
そんな二人の元には、SNSを通じて、悩みを抱えている同性愛者から相談が寄せられる。
みなつ(右)北海道出身。しゃのん(左)東京都出身。
2016年に出会い、翌年、結婚。これまで二人で雑誌「東京グラフィティ」やASIAN KUNG-FU GENERATION『ボーイズ&ガールズ』http://k.asiankung-fu.com/s/n2/page/smoj_info_archive?499056のミュージックビデオに出演。同性カップルとしてメディアに出ることは「なかなかできない体験だから」(みなつ)。
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