“もうおばあさんだから”、なんてない。
BACK STREET SAMBERS、通称「三婆ズ」は、65歳、68歳、72歳の女性3名で構成されるダンスユニットだ。Instagramのフォロワーは10万人超。ダンス動画には、コメントで「キレキレですね」「カッコいい」といった声が集まっている。年齢にとらわれず新たなことを始める原動力について、話を伺った。

「いつか経験してみたい」「一生のうちにこれだけはやっておきたい」と思っていても、さまざまな障壁に阻まれて一歩踏み出せないこともある。中でも「年齢」は、大きな障壁のひとつだろう。「今から始めても遅くないだろうか」「家族のために家事や子育てだけじゃなくて、自分のために時間を使ってもいいのか」「周りの目が気になる」とネガティブに感じてしまうことは無理もない。
しかし、日本の平均寿命は上昇を続け、健康寿命も延びている中で、年齢を理由にして何かを諦めない人も多様な形で現れている。
茨城で活動するダンスチーム「BACK STREET SAMBERS」、通称「三婆ズ」は2020年結成で、メンバーの平均年齢は68.3歳。周りから後ろ指をさされないかと悩みながらダンスを始め、チームを結成し、SNSを通して10万人以上のフォロワーに活動の様子を届けている。
最初は家族にさえ黙っていた活動も、「あれ、ばあばじゃない?」と孫に見つかる。同世代で近所の知人・友人には知られていなくても、SNSを通じて世界中にファンがいる。
そうしてやりたいことをやり、新たな友達をつくり、世界を広げていった「三婆ズ」のみなさん。ダンスを始める時やSNSで発信をする時の不安や悩み、それらを乗り越えていけた原動力、考え方の変化とは。
やってみて、できなかったらやめればいい。
世間の目が気になっていた
Michiyoさんは不安が大きかった。仕事や子育てを続けてきて、60歳でダンスに興味を抱いたが、始めるまでには3年かかった。
Michiyoさん
Michiyoさん「60歳の時、孫が出るダンスの発表会を見に行ったのがきっかけで、ダンスをやってみたいと思いました。それから3年間、悩みに悩んでいました。まず『体が動くかな』と不安でしたし、もっと不安だったのは世間の目です。『あんなおばあさんが、今からダンスを始めるの?』と思われないかなと……。
でも、3年後にようやく意を決して、スタジオに通い始めました。スタジオにいる方々の年齢層が比較的高めだったのと、たまたま孫が教わっていた先生のクラスに入れたので良かったです。『できなかったらやめればいい』とは思っていました」
Keikoさんは転勤族だった。それぞれの地域でやりたいことをやり、楽しむようにしてきたが、長く続けられない環境だった。
Keikoさん
Keikoさん「夫の仕事は転勤が多かったので、好きなことがあっても長く続けるのはなかなか難しかったです。転勤先に行ったら、そこで楽しめることをやるようにしていました。
もともと体を動かすのは好きだったんですけど、ダンスをやるとは全く思っていませんでした。でも娘が大学でサークルに入って、HIPHOPのダンスを始めて、見に行っているうちに興味が湧いてきました。それで58歳の時、たまたま近所のスポーツジムに通い始めたら、HIPHOPのクラスがあって。いろんな年代の人がやっていたのもあり、私も始めてみました。ジムはあまり難しいこともやらないので結構楽しくて、やっているうちに専門のダンススタジオにも行ってみたいなと思うようになりました」
HiromiさんがそんなMichiyoさんとKeikoさんを誘って、2020年にチームを結成。SNSで動画を公開すると、たちまち注目され、フォロワーが急増。BTSの「Permission to Dance」のダンス動画を投稿すると、16万以上の「いいね!」がついた。近所に住む友人・知人はダンスをやっていることさえ知らなくても、日本全国、さらには世界の人たちが三婆ズを知っているという不思議な状況に。最初は、家族にさえ知らせていなかったそうだ。
Michiyoさん「最初は、やはり恥ずかしい気持ちはありましたね。SNSで発信したら友達にも知られてしまうのではないかと不安でした。でも、私と同年代の友達はインスタもやっていないので、バレませんでした(笑)。近所の人たちも全然わかっていませんでした。
始めてから1年間は家族にも内緒にしていました。1年後、発表会に出た時、孫に『あれ、ひょっとしてばあばじゃない?』と言われて(笑)。それからは、SNSの発信も含めて応援してくれていますね」
交友関係が広がって、固定観念が薄れていく
3人のメンバーの中で、Hiromiさんはダンス歴が最も長く、チームを引っ張る存在だ。40歳からダンスを始め、HIPHOPの世界大会のオーバー40部門に出場、海外のダンスバトルへの参戦など、積極的に活動を広げてきた。しかしそんなHiromiさんも、固定観念にとらわれていたことがあった。
Hiromiさん
Hiromiさん「年を重ねて感じるのは、若い頃は固定観念にとらわれて『こうしなくちゃいけない』と思っていたことがあったなと。子育ては特にそうで、『子どもはこうやって育てなくちゃいけない』と感じていたこともありました。
でも、世の中にはいろんな考え方があることを、私は世界のダンサーたちと出会って知っていきました。ダンサーには良い意味で変な人が多くて(笑)。世界の友達が日本に来る時には1日一緒に過ごしたりしますが、私の考えていることと全く違うことを考えているのがよくわかります。そういう人たちを目の当たりにして、固定観念が薄れていきましたね」
ダンスをきっかけにして、世界中に友達ができて、Hiromiさんの価値観が変わっていった。そして今度は、Hiromiさんが他の人の価値観に影響を与える存在になっていった。
Hiromiさん「ダンスバトルに出るのが好きで、最初はラスベガス、次はオランダに行っていました。オランダのダンスバトルでは、アジア人が誰もいなかったんです。だからアジア人がいるだけでもびっくりされるんだけど、私はおばさんで、『この人がダンスバトルやるの?』みたいな。さらにびっくりされて、地元のテレビ局の取材を受けたりもしました。
その時にすごく歓待されて、海外の有名なダンサーたちも『Hiromi!』と声をかけてくれるようになって、うれしかったです。そうしているうちに日本の若いダンサーたちが刺激を受けてくれたようで、『こんなおばさんが行くんだ』『俺たちも行けるんじゃないか?』と、飛んでいきました。今ではそのイベントに日本人がいっぱい参加しています」
そんな経験が「三婆ズ」の活動につながっているのだ。
桜川の横でいつもダンス動画を撮影している。この気取らないナチュラルさも彼女たちの魅力。
やらなかった後悔よりも、やってみた後悔を
SNSを通してダンスの様子を発信している三婆ズ。もともとHiromiさん個人は積極的に活用していたが、KeikoさんとMichiyoさんはSNSをやっていなかった。それでも、反響をうれしく思っているそうだ。
Keikoさん「この年で踊っている姿をお見せしていると、『元気をもらえる』といった反響が一番多いです。他にも『勇気をもらえました』『背中を押されました』といったコメントもすごく多くて、うれしいですね」
Michiyoさん「『いつもキレキレのダンスですね』とコメントしてもらえることがあって、どこがキレキレなんだろうと思うぐらいなんですけど(笑)。でもありがたいですね」
最後に、年齢を理由にやりたいことを諦めかけている人へ伝える、メッセージをもらった。
Michiyoさん「私はダンスを始める時に悩みましたけれど、 やはり何をやるにしても、年齢は関係ないんだとわかりました。自分がやりたいと思った時が、始める時。まずは1歩、踏み出してみることですかね。 やってみてできなかったらやめればいいだけなので、まずは実際にやってみた方がいいと思いますね」
Keikoさん「70歳を過ぎてまさかこんなに人生が変わるとは、自分でも思っていませんでした。でも今は踊ることがとても楽しくて。みなさんも何か楽しいことを見つけられたらいいなと思います」
Hiromiさん「私はやってみてよかったなと思っています。やらなかった後悔とやってみた後悔があるなら、やってみた後悔の方がいいと思うので、やりたいことがあって悩んでいる方はぜひやってみてほしいです」
「何かを始めるのに、遅すぎることはない」――。頭ではわかっていても、実際に行動に移せない人は少なくない。実際に三婆ズのみなさんも、迷いや不安があった。それでも3人が行動に移すことができたのは、ともに楽しむ仲間の存在があったから。今ではダンスチームを組み、仲間で支え合っていくことが、大好きなダンスを楽しく続けることにつながっているのだろう。
三婆ズが笑顔で互いの顔を見合いながら踊っている姿を見れば、そのチームワークの良さはすぐにわかるだろう。ぜひ三婆ズの動画を見てみてほしい。
取材・執筆:遠藤光太
撮影:内海裕之

茨城県を拠点に活動するダンスユニット。2020年結成。メンバーは、Hiromi(65歳)、Michiyo(68歳)、Keiko(72歳)。Instagramのフォロワーは10万人を超える。※年齢は2022年12月時点。
Hiromiさん(中央)
「三婆ズ」のリーダー。選曲、振付、SNSの運営を担当する。40歳からダンスを始め、HIPHOPの世界大会のオーバー40部門に出場、海外のダンスバトルへの参戦など、積極的に活動を広げてきた。好きなジャンルはハウスダンス。
Keikoさん(右)
娘が大学のサークルで取り組むダンスを見て、58歳からダンスを始める。好きなダンスのジャンルはHIPHOP。
Michiyoさん(左)
仕事と子育てに力を入れてきたが、60歳で孫のダンスを見て興味を持ち、3年間迷った末に63歳でダンスを始める。好きなダンスのジャンルはロック。
Instagram @back_street_sambers
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