住まいの相談ができるのは住宅展示場や不動産会社だけ、なんてない。―立ち上げ以来、高い満足度を保つ「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」―
不動産・住宅情報サービスサイト「LIFULL HOME'S」が提供する無料の住まい選び・家づくり相談窓口「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」。住み替えを検討する相談者の家づくりや住宅購入に関する不安に寄り添い、理想の住まいを叶えるサポートをしてきたこのサービスは、2016年の立ち上げから高い信頼を得ており、直近の調査ではサービス満足度はなんと99%を超えている。サービスの立ち上げから携わる住まいの窓口ユニット長の菊地宗に、「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」がこれまで歩んできた道のり、そしてこのサービスが見据える未来について聞いた。
「予算が決まってない」「土地の探し方がわからない」、そもそも「何から始めたらよいかわからない」。家づくりを思い立った時、まずこのような疑問に直面する方は多い。そうした悩みに応えるため誕生した「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」ではあるが、サービスが軌道に乗るまでには様々な苦労や試行錯誤があったという。現在では全国65店舗にまで拡大した「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」。過去も現在も、LIFULLの経営理念がこのサービスの原動力になっていると菊地は言う。
ビジョンの浸透が、高いお客様満足度につながっている。
リアルサービスのノウハウが無い中始まった「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」
「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」の立ち上げ当時、既に他社の類似サービスが広く全国に展開していた。そうした中でも「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」が誕生した背景には、LIFULLの経営理念である『常に革進することで、より多くの人々が心からの「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創る』が深く関わっていたと菊地は語る。
「我々がこのサービスを立ち上げたのは、従来のLIFULL HOME'S事業だけでは、住まい探しをしている人々へリーチできる数に限界を感じていたからでした。特に注文住宅購入の際には、インターネットの情報だけでは不安な面があると思います。そうした悩みに応えるため、そして何より『より多くの人々』へと向けられたLIFULLの経営理念を実現するためには、お客様と直接対面するリアルサービスが無ければならなかったんです」
当時はポータルサイト事業がメインのLIFULLは、ユーザーと直接対面するリアルサービスをまだ手がけていなかった。そのためリアルサービスに詳しい人材も不足しており、立ち上げ当初は決して順風満帆ではなかった。
「当初、我々は大多数のユーザーを対象にセミナーを開催することで集客をしていました。現在の1対1の相談形式ではなく、大多数をセミナーで呼び、大多数に不動産会社や建設会社を紹介していくやり方です。これは既存の相談窓口サービスとの差別化を図ったものでしたが、結果的には失敗でした。セミナーを開いても情報を聞き終わったら 、会社のご紹介に至ることなく帰ってしまわれていました。その反省から、現在のような一人一人の要望に寄り添える1対1の相談形式にシフトしていきました」
この方針転換により、ユーザーの要望を叶えるのに最適な建築会社・不動産会社を紹介する、というサービスの本来の目的まで進めるようになった。ただ、集客には引き続き苦戦した。
「どうしたらサービスを軌道に乗せることができるか、本当に365日そればかりを考えていました。売り上げを伸ばすには店舗の数を増やしてお客様を増やす必要があります。しかし、店舗を増やせば維持費のコストがかさむ。そこで私が考えついたのが、サテライト店の導入でした。これは街中にあるカフェと契約し、お客様の予約が入ったら店内の席を数時間借り、その時間分の料金を支払う成果報酬型の店舗システムです。これであればお客様の予約が入った時しか店のコストがかからないため、格段に店舗を広げやすくなりました。他にもいろいろな施策を講じましたが、このサービスが軌道に乗ったのはこのサテライト店の導入が大きかったと感じています」
菊地のアイデアに他のメンバーも「カフェで話すの?」と最初は半信半疑だったというが、カフェで面談した利用者にアンケートをとったところ、満足度は変わらず、むしろカフェの方がリラックスして喋れるという声もあった。それ以降、店舗数は急激に増え、現在ではサテライト店含め全国65店舗まで拡大している。
「得意」と「できる」は違う
事業の存続のため、様々な変遷を辿ってきた「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」。改めて「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」とはどんなサービスなのか、菊地に尋ねた。
「一言で言えば、『お客様にとっての理想の不動産会社・建設会社を紹介すること』をゴールとしているサービスです。家づくりというのは、ほとんどの方にとって一生で一度の大きな買い物です。だからこそお客様自身も、自分が理想とする家がわからないことが多い。注文住宅、建売、マンションといったいろいろな可能性がある中で、一人一人の家づくりの理想を丁寧にヒアリングし、住まい選びの軸を一緒に見つけていく手伝いをする。そして理想を叶える家づくりをしてくれる会社を紹介する。お客様と実際に家づくりを担う会社との最適なマッチングを提供するのが我々の役目です」
「家づくりにおいて特に難しいのが、『自分にとって良い建設会社や不動産会社を見つけること』です。家づくりに関わる会社はたくさんあるし、そもそもどういった選択肢があるかわからない人も多い。我々はLIFULL HOME'Sが審査し、厳選した約200社の中から、お客様の要望を叶えてくれる会社をご紹介しています。もしこれをお客様自身で1件1件問い合わせていたら、とてつもない労力が必要ですが、住まいの窓口なら数時間の面談で、あらゆる可能性の中から家づくりに精通したスタッフとともに精査することができるんです」
家づくりは人生で一回きりの買い物かつ、人生で最も高価な買い物だ。なるべく慎重に、あらゆる可能性を吟味して決めたいのが当然である。だからこそ「住まいの窓口」では、利用者に絶対に後悔させないよう、丁寧なヒアリングと条件整理を徹底している。
「我々がよく言うのは、『得意』と『できる』は違うということです。建築会社と一括りで言っても、二世帯住宅が得意とか、自然素材を使った家づくりが得意とか、それぞれ得意な家づくりは異なります。ただ、それが得意じゃなくても、『できる』という言い方をする会社があると思います。確かにできるんだけど、得意な会社と比べたら仕上がりに差が出る。だからこそそれぞれの違いや得意分野を見極め、利用者のニーズを見極めご提案をすることが我々の仕事であり、結果的に良い家づくりにつながります」
住宅展示場で話を聞いたり、直接建設会社や不動産会社に問い合わせることと比較した上での「住まいの窓口」のメリットは上に述べた通り。しかし、世の中には「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」と同様の住宅無料相談サービスが他にもある。それらと比較した時に「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」だからこその強みはあるのか、菊地に訊ねた。
「それは『人』だと思っています。実際にお客さまの対応をし、住まいづくりの始めの一歩をサポートするスタッフのことをハウジングアドバイザーと呼ぶのですが、彼らの採用と教育にはとても力を入れています。ハウジングアドバイザーはLIFULLの社員でもあるので、当然LIFULLの経営理念やビジョンがしっかりと浸透していますし、必然的にそうしたスタッフが提供できるものの価値や質は高くなっていく。ハウジングアドバイザーこそが、他社のサービスにはない強みだと思います」
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原点に立ち返るビジョン
住まいの窓口では、現在「一人一人に寄り添い、最幸の体験をつくる」というビジョンを定めている。最高を「最幸」としたのは、このサービスを利用した人を幸せにしたいというLIFULLの利他主義の姿勢を明快に表現したものだ。冒頭でも述べたように、サービス満足度が99%を超えるという高い満足度を誇る「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」。その秘訣は何なのかを菊地に尋ねると「このビジョンが全スタッフに浸透していること」という答えが返ってきた。
「LIFULL報告という取り組みはスタッフのビジョン浸透に特に一役買っていると思います。お客様に会社をご紹介して無事成約になったら、ハウジングアドバイザーが今回の成約に至るまでのストーリーを全スタッフに共有してくれるんです。それを見た他のハウジングアドバイザーは、どういう思いでお客様が相談に来ているのか、そしてそれに対してアドバイザーがどう対応したのかを学ぶことができるので、自然とチームのビジョンを体現する経験値が積み上がっていくのです」
そして社内共有以外にも、来場者アンケートのチェックを毎週欠かさず行っていることも重要だという。
「特にアンケートで重要視しているのは『親しい人に住まいの窓口を紹介したいか』という項目です。日本人はなかなか他人に勧めたがらない国民性らしいのですが、アンケートでは半分以上の方が強く勧めたいと答えてくれています。また、フリーのコメント欄も全部チェックしています。そこでお客様から『スタッフの対応が悪かった』や『カフェの席がタバコ臭かった』などのフィードバックがあれば、すぐにそれは改善するようにしています」
利用者の要望や理想を第一に作り上げていく「一人一人に寄り添い、最幸の体験をつくる」というビジョン。2023年2月に新たに作られたこのビジョンには、もう一度住まいの窓口というサービスの原点に立ち返ろうという思いが込められている。
「このサービスもおかげさまで軌道に乗ってきたと言えるところまできましたが、このタイミングでもう一度このサービスがなぜここまでお客様から信頼を得られているのか、それを改めて考える必要があると感じました。最初は苦労しましたが、それでも一人一人のお客様にかける熱い思いがあったから、今こうして続けられているし、成長できている。その立ち上げ当初の思いを今後もずっと忘れず、そしてブラさずいけば、LIFULL HOME'S 住まいの窓口は今後も成長を続けていける。そう考えて、この原点回帰とも言えるビジョンを掲げました」
こうしたビジョンを打ち出すとともに、「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」は2024年1月から、愛知県や岐阜県で新たな施策「ビデオ通話相談BOX」を展開している。これは、オンラインかつ完全個室の相談サービスで、住まいの窓口の店舗が近隣になく、自宅でのオンライン相談も難しいという悩みを抱えた地方在住者が、人目を気にせずハウジングアドバイザーに無料で相談ができるというもの。この施策によって、これまでリーチできなかった層にこのサービスを届けようとしている。
新たな動きも見せている、「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」。最後に今後の展望について菊地に尋ねた。
そのために、今スタッフのみんなに言い続けているのは、この住まいの窓口というサービスを、もっと言えば住宅相談サービス自体を“住み替えのスタンダード”にしたいということです。現状、「家を建てたい」と考えた人は不動産屋か住宅展示場に行く方が多く、住宅相談サービス自体が世に浸透しているとは言えません。
だから他社のサービスを超えるとかそういうことではなく、住宅相談サービス自体の価値を高めていけるよう、これからも「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」の質と展開にはこだわっていきたいと思います。
取材・執筆:平木理平
撮影:服部芽生
大学卒業後、不動産会社「株式会社中央住宅(ポラス)」に入社。新築分譲住宅の部署にて、営業・広告業務などに従事したのち、2008年「株式会社ネクスト(現LIFULL)」へ入社。営業、マネジメントのグループ長を務めた後、2016年よりサービス責任者として「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」の立ち上げに参画。
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