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世の中の母親はこうあるべき、なんてない。

西山 茉希

ファッション雑誌やバラエティ番組などを通じて、男女問わず幅広い人気を集める西山茉希さん。プライベートでは2児の母親として忙しい毎日を送っている。STAY HOME期間中には、自宅のキッチンからほぼ毎日インターネットのライブ配信を行い、視聴者とリアルタイムで交流を深めた。併せて、子どもたちとの“おうち時間”によって新たな発見や気づきがあったとも話す。STAY HOMEの前と後で、自身の子育てや家族観はどのように変化したのだろうか。

外出自粛で思うように出かけられなくなり、自宅でどう過ごすか悩み、時にそれがストレスになる。子どもがいる家庭なら「早く楽しい場所へ連れて行ってあげたい」と思うのが親心。しかし、ちょっとの工夫で“おうち時間”はお出かけと同じくらい、もしくはそれ以上に楽しくなる。シングルマザーとして2人の子どもと過ごした西山さんのSTAY HOME体験から、そのヒントが見えてくるかもしれない。

しんどい思いをしているときだからこそ
リアルな自分を発信しようと思った

自身のYouTubeチャンネル「西山茉希の#俺流チャンネル」で、自宅のキッチンから調理風景を紹介する、その名も「西山食堂」。以前は、事前に撮影した映像を後日投稿するスタイルだったが、コロナによる外出自粛を機に、リアルタイムで視聴者とつながるライブ配信に切り替えた。

「人との接触を避けるためにテレビや雑誌の仕事がすべてキャンセルになって、さぁどうしようと。YouTubeの動画も今まではスタッフさんが撮影、編集してくれていたので、誰の手も借りられなくなった状況の中で、自分で何かを発信していかないとタレントとして何の価値もない、ただの“在庫品”みたいになっちゃうと思ったんです。そこで、この時期だからこそ私からみんなに届けられるものって何だろう?と改めて自分自身を見つめ直しました」

一人で始めたライブ配信初日。画面上には、スマホの操作が思うようにいかず試行錯誤しつつも、視聴者を楽しませようと笑顔でキッチンに立つ西山さんの姿があった。以後、お昼ごはん、夕ごはんの1日2回、ライブ配信するのが生活の一部になり、日を追うごとに視聴者数も増加。チャットを通じてSTAY HOMEの過ごし方についておしゃべりするなど交流も深まっていく。

「ライブ配信では、照明もないしオシャレな演出もないし、生活感丸出しです(笑)。でも、リアルな自分の姿を見てもらうことで、『不安なのはあなただけじゃないよ!』っていうメッセージが届けられたらなと思いました。自分も含めて多くの人がしんどい思いをしている中、“今”を共有することで支え合えるのかなって。実際、私もリアルタイムで届く視聴者のチャットコメントからすごく元気をもらえたし。この感動は、普段のお仕事で感じるものとはまた別モノで、深く心に響いてきましたね」

楽しさをつくる時間も大切

モデル、タレントとして活躍する西山さんは、2人の小さな子どもを抱えるシングルマザーでもある。STAY HOME期間中は保育園や小学校も休みになり、家族3人、ずっと一緒に過ごす生活になった。

「STAY HOMEで時間はいっぱいあるはずなのに、STAY HOMEだから時間が足りない!って感じでしたね(笑)。さっき掃除したばかりなのに5分後には部屋中散らかってて、またそれを片付けて……。お昼ごはんが終わって一息ついたらもう夕ごはんの支度、みたいな。でも、私は仕事、子どもは幼稚園と学校でバタバタ慌ただしく過ごしていたときよりも確実に親子の会話は増えたし、せっかく与えてもらったこの機会を大切にしようって思いました」

そんな西山家では、STAY HOME期間中にさまざまな“遊び”が生まれた。そのひとつが「映画館ごっこ」。

「夕ごはんが終わったあと、子どもたちが手作りしたチケットと電子レンジで作ったポップコーンを用意するんです。で、部屋の明かりを消して映画館みたいな雰囲気にして、テレビ画面で好きな映画を観ました。あとは、宝探しごっこも結構はやりましたね。外出自粛でショッピングに行けなくなったので、家にあるオモチャや洋服を袋に詰めて、部屋のどこかに隠すんです。それをみんなで探すんですけど、見つけたときの喜びがハンパない! まるで新しいプレゼントを買ってもらったみたいに盛り上がりました(笑)」

STAY HOMEを経験するまでは、映画館やショッピングセンターなど、どこかへお出かけするという“行動”で子どもを楽しませていたし、それが最良の方法だと思っていた、と西山さん。しかし、子どもたちと創意工夫しながら“おうち時間”を過ごしたことで考え方が変わったという。

「映画館ごっこの日は、夕方くらいから子どもたちがそわそわし始めて、『チケット作っておくね!』って楽しそうに準備を始めるんです。私としては、『映画館に連れて行ってあげられなくてゴメンね』という気持ちだったんですが、子どもたちは本物の映画館に行くよりもはしゃいでいました。“楽しい”がある場所に行くことは簡単だし、子どもを楽しませるには近道なんだけど、楽しさをつくる時間まで一緒だと、すごく心に残るんだなって。行動だけを追いかけるのは大人の悪いクセなのかもしれないですね」

世の中のママはある意味みんなシングルマザー

STAY HOMEによって家族と過ごす時間が増えたり、あるいは離れて暮らす家族と思うように会えなかったり。今回のコロナ禍では、家族との関係性を改めて見つめ直した人も多かったのではないか。働きながら子育てに奮闘する一人の女性として、西山さんは自身の家族観や母親としての在り方についてどのように考えたのだろうか。

「私はいわゆる“シングルマザー”ですけど、世の中のお母さんって、ある意味みんなシングルですよね。だから、『シングルマザーだから大変です』とか言うつもりもないし、他のシングルマザーに対しても特別視したくはないんです。旦那さんがいてもいなくても、お母さんの大変さは一緒だと思ってるから」

さらに、「母親はこうあるべきだ」とか「シングルマザーはこういうものだ」という既成概念に縛られていると、逆に自分を苦しめてしまうのでは、とも。

「今の世の中、“お母さんの正解論”みたいなものが溢れすぎているような気がするんです。たしかに、働きながら子育てしていると迷ったり悩んだりすることが多いので、正解を求めていろいろ調べたり、答え合わせしたくなるのもわかります。でも、そこで出た答えが正解かどうかは子どもにしかわからない。だから私は、正解はわからないままでいいと思ってます。その中で、できるだけ後悔しないように、もがいてもがいて、子どもとふれ合う時間を1分1秒でも多くつくることができれば、それでいいのかなって」

おそらく西山さんも、迷ったり悩んだりしながら子どもたちとの幸せな時間を模索してきたのだろう。それをうかがわせるように、話しながら一瞬、言葉を詰まらせて涙ぐむ場面もあった。

「STAY HOME期間がそろそろ終わりそうになってきて、子どもたちと『保育園も小学校もやっと始まるね〜』みたいな話をしたときに、2人とも『やだ!!』と言ってくれたんですよ。その言葉を聞いて、この子たちはSTAY HOMEの時間を幸せに感じてくれていたんだな、と。家の中にずっといなくてはいけない毎日にストレスを溜め込まず、ママといられることをうれしいと思ってくれていたんだって。それがわかったときは本当にうれしくて……。すみません、やっぱり子どもの話をするとちょっと泣いちゃいますね」

考え方次第でプラスにもマイナスにもなる

STAY HOMEでは、家族と過ごせる時間が増える一方で、それ以外の人たちと会いたくても会えない時間が続いた。社交的でお酒が大好きな西山さんには、人と会えないことが多少なりともストレスになったのでは?

「もちろん、ストレスはありました。でも、人に会えない環境になったからこそ、人を見つめすぎないそれぞれの時間になったと思うんですよね。それと、会えないことをマイナスにするのは自分自身の考え方次第だな、と。それに気づいたとき、STAY HOMEをめいっぱい楽しもうという発想に持っていくほうが得だなって思ったんです。明日をどう楽しく生きるか、この状況の中で何ができるのかを考えるほうが絶対に楽しいですよね。そうした気持ちの切り替えが、YouTubeのライブ配信や子どもたちとのいろんな遊びにつながっていったんだと思います」

一方で、子どもたちの保育園や小学校が再開し、西山さんの仕事も徐々に動き始める中、以前の日常が戻ってくることに西山さんの心は少し揺れていた。

「STAY HOME中に大事だなと思ったことがたくさんあるんですけど、元の生活が始まると日々の慌ただしさに紛れて、いつの間にか忘れてしまうのかなって。お出かけも自由にできるようになれば、手軽さや便利さをつい優先して、欲が生まれやすい世界に流されてしまうというか……。それを、仕方がないよね、で片付けてしまうのはちょっと残念な感じですよね」

ただ、これからまた社会が変化して予想していなかったような状況に置かれたとしても、本当に大切なことは揺るがずに守っていきたいと話す西山さん。STAY HOMEが教えてくれた子どもたちとのステキな時間を無駄にしないためにも。

以前の生活に戻っても、周囲の景色や空気にのみ込まれないようにして、自分が大切だと思った価値観やライフスタイルを実現できる場所は守り続けていきたいです。子どもたちが『ただいま!』って帰ってきて『行ってきます!』と出かけていける心の拠り所になるような住まいや暮らしを、家族の代表として私が守らなきゃって思うから。全力で頑張ります!
Profile 西山 茉希

1985年生まれ、新潟県出身。2005年より雑誌『CanCam』の専属モデルを務め人気を博す。同誌卒業後は『GINGER』のレギュラーモデルになる。そのほか、格闘番組や歌番組のMCをはじめ、バラエティや情報番組、CMなどに多数出演。趣味はモノ作り(デザイン、文章を書くこと)、料理、発汗(銭湯)など。

STORIES 2020/08/03 世の中の母親はこうあるべき、なんてない。