【後編】エイジレス社会実現に向けた取り組み・課題・多様なライフスタイルとは
日本では、1990年に12.1%だった高齢化率が2020年には28.8%まで上昇しました。 高齢化率が高まりつつある今日、年齢に囚われることなく、多方面で活躍している高齢者も増えてきています。全年代の人たちが、多様なライフスタイルをデザインできるエイジレス社会の実現に向けて、具体的にどんな取り組みが行われ、どんなことが課題になっているのでしょうか。
この記事では以下4点について見ていきます。
前編
後編
パワフルに活動する高齢者が増えると日本は元気に
少子高齢化が進み、人口が減少しつつある日本では、エイジレス・ライフの考え方を持った高齢者のパワフルな活動が、国の活力を底上げする存在になっています。年齢とらわれず、自分らしいライフスタイルを楽しむ高齢者や、年齢を理由に夢を諦めずに活躍する方が当たり前にいる世界こそ、エイジレス社会の目指すべき未来です。実際に、エイジレス・ライフを実践し活躍されている事例を紹介します。
87歳で日本最高齢のフィットネスインストラクターとなった瀧島未香さんは、「年齢を理由にやりたいことを諦めない」「できないと決めつけないで続けることが大切」と信じて、元気に100歳を迎えることを目標に、トレーニングを続けています。
個性的な“カゲキファッション”を楽しみ、絵本の読み聞かせ活動を行っている志茂田景樹さんは、“今を楽しむ”ことを大切にしながら、自分のやりたいことに実直に取り組んでいます。
MCでこ八さんは孫の影響でヒップホップに出合い、68歳でラッパーとしてデビューしました。やりたいことにまっすぐに突き進む性分だったというでこ八さんは、孫とともにヒップホップユニット「赤ちゃん婆ちゃん」を結成し、現在70歳ながら精力的に音楽活動を行っています。
高齢者が安心して暮らせる社会の実現
高齢者の暮らしには、孤独死や住まい探しが難しくなるなどさまざまな不安が付きまといます。
日本では高齢化と核家族化が同時に進んでいるため、2015年には高齢者人口に占める1人暮らしの割合が、男性は13.3%、女性は21.1%になるなど、年々上昇傾向にあります。このような高齢者の単身世帯を対象とした住宅施策では、住宅のバリアフリー化や福祉施策との連携が急務です。高齢者住宅施策として、政府が取り組んでいる事例の一部を抜粋します。
- 公営住宅における高齢者の単身入居を可能とする
- 保険を活用した家賃の支払いの促進
- 高齢者向けの民間賃貸住宅の提供を促進
- 公営住宅のバリアフリー化
- 民間住宅のバリアフリー化促進のための指針の制定
- 高齢者生活相談所の利用の促進
政府主導ですでに進められている施策もありますが、住宅セーフティネットの構築、ユニバーサルデザインの促進、旧耐震基準で建てられた住宅の改善などが、国土交通省の審議会にてこれから取り組むべき課題として提唱されています。
また、公的な政策やサービスだけでなく、民間企業の中でも住宅に関連した高齢者向けサービスも次々と生まれてきています。
株式会社LIFULLの住まいの支援事業「LIFULL senior」は、全国の介護施設情報の掲載だけでなく、実家の片付け・遺品整理・買い物代行業務支援サービスの展開、空き家の利活用事業など、高齢者の住宅にまつわる総合的なサービス展開を行っています。
株式会社R65の代表取締役、山本遼さんが取り組んでいる事業は、孤独死や家賃の支払いが滞る心配があるとして敬遠されがちな高齢者の住まい探しを請け負う不動産事業です。見守り機器や保険などのサービスを付けるなどの工夫によって、高齢者でも賃貸物件という選択肢が取りやすい社会を目指しています。
まとめ
高齢化率が上昇の一途をたどり、平均寿命・健康寿命が共に延び続ける現代では、「高齢者といえば年金や貯蓄で暮らしていて、社会とのつながりが乏しくなっている」という既成概念は崩れています。人は年齢に関係なく自由な選択肢を持ち、社会とつながり活躍できるのです。
また、公的サービスの充実や民間企業の参入により、高齢者がより良い暮らしを送るための選択肢が増えてきています。高齢者はこうあるべき、子どもはこうあるべき、という画一的な決めつけを見直し、積極的な社会参加を応援・実現するためには、世代や民間・行政の垣根を越えた協力が必要です。
エイジレス・ライフの浸透や制度の整備など課題はあるものの、年齢にとらわれないエイジレスの考え方は、着々と世の中に広まりつつあります。エイジレス社会の実現に向けて今後もさまざまな取り組みが行われていくでしょう。
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